ユリさんの手術体験記

初回公開日:2012年9月2日

まえがき

yuri

AIJオペアのユリさんは、2011年8月にオペアとして渡米しました。1年間のオペア生活終了間際に下腹部に痛みを感じ、アメリカの医療保険・施設を利用して診察・検査の末、最終的にアメリカの病院で手術を行いました。以下はその経験についてのユリさんの手記です。
アメリカでオペアとして同じように忙しく、体力・精神力を伴うお仕事をしている皆さんの参考にしていただければと思います。オペアにはプログラムから健康保険が提供されています。自分の大事な体を守れるよう、体調不良を感じたら、早目に医師に相談をしましょう。

①2012年6月

ホストファミリーの引越しが決まり、当時暮らしていたテキサスから新居のあるニュージャージーまでのロードトリップに同行しました。人間6人、犬2匹で丸一週間かけた大移動でした。
引越し直後、腹痛(鈍い痛みで生理痛や下痢の痛みと違う)を感じました。引越しの疲れかと思い2~3日様子を見てみましたが、痛みが取れないため、ネットで医療施設を探しました。そしてPlanned Parenthoodというグループを見つけました。この病院は婦人科系の医療施設で低所得者にとっては料金が安く、ネットワークも広いようでした。たまたま引越し先の家の近くにあり、早速予約をしました。オペア保険の使用も考えましたが、体調不良についてホストファミリーに言いにくかったのと、またすぐに診察して欲しかったので保険は使わず、すぐ医師に会えるこの施設を選びました。

②7月2日 Planned Parenthoodで検診

PAP(子宮頸がん)検査、膀胱炎検査、性病検査、またドクターによる内診を行いました。結果はその後連絡をくれることになりました。

(この日のコスト:$100)

③7月23日 Planned Parenthoodより検査結果の連絡

検査の結果、PAPテストがアブノーマル、その他は異常なし、ということが分かりました。
☆この病院では、検査結果の説明の時や、英語が分からない時は、無料で電話での通訳をつけてくれました!
「PAPテストがアブノーマル=前癌細胞あり」を意味します。ドクターから6カ月以内にコルポスコピーという精密検査を受けるように指示されました。

(この日のコスト:$0)

事態が深刻であり、また精密検査のコストも発生することからオペアの保険を使うことにしました。またホストマザーにこのことを話しました。すると、ホストマザーも数年前同じ経験(子宮頸がん直前)をした、ということが分かってとても驚きました。彼女はその分この病気についての知識も豊富で、「一刻も早くコルポスコピーをしないとダメ!」、と警告してくれました。
このこともあり、自分で急いで保険会社に連絡をし、保険会社のHPからコルポスコピーができる病院を調べて予約を入れました。

④8月9日 コルポスコピー

特殊な内視鏡で子宮頚部を診察し、細胞採取(バイオプシー)。ドクターが4カ所くらいチョン、チョンと細胞を切り取っているようでした。つままれるような痛みがありました。

(この日のコスト:保険のCopay $50)

⑤8月16日 コルポスコピー結果

ドクターから「Dysplasia」という子宮頸癌の一歩手前の状態なので、1カ月以内にLEEP(Loop Electrosurgical Excision Procedure)という手術を受けるよう言われました。これはループ型の高周波電気メスとその発生装置の組み合わせ装置を用いた細胞切除手術です。できるだけ早く前癌細胞を取り除いておかないと、100%がん細胞に変わる、ということでした。

(この日のコスト:保険のCopay $50)

⑥8月22日 LEEP手術前日にPre-Operation検査

アメリカでは手術前日(または数日前)に手術前チェックを行うことが多いようです。この日は血液採取(4本くらい)をしました。また翌日の手術後の痛みに備えて痛み止めの薬を処方してくれました。
注意事項として、その日は夜12時以降は飲み食い禁止、と言われました。

(この日のコスト:保険のCopay $50+痛み止めの処方箋を薬局で処方してもらった $12.86)

⑦8月23日 LEEP手術当日

yuri before operation

朝11時に病院にチェックインしました。「Same Day Surgery」という部署でした。
チェックインの際に事前確認項目がたくさんあり、過去の病歴、手術歴、アレルギー、現在薬を使っているか、など多くの質問をされます。
その後「Holdingエリア」という”手術前セクション”に行って手術着に着替え、ベッドに入って点滴を始めました。前日夜12時から水分も一切取っていないため、水分補給ということでした。

to operation room

その後すぐに手術エリアに移動(看護婦さんがベッドごと押して移動させてくれました。テレビドラマのようでした)し、麻酔士を待ちました。10分ほど経過して麻酔士が到着し、また体調についていくつか質問されました。麻酔士はとても感じのいい男性で、「この手術はシンプルなので、本当は部分麻酔ででもできるものなんだ。実は僕のワイフも以前同じ手術をしたけど、意識があるままやったんだよ。今日は軽めの全身麻酔をするよ。点滴から入れてリラックスした状態にして、その後マスクでガスを入れるから、次に目覚めたときには手術後だよ。安心してね」と説明してくれました。その後手術室へ運ばれました。

after operation

マスクをして、周囲の人の会話を聞いていて、コストコの話をしてるな~、というところで意識を失いました。麻酔士の説明通り、その後、目覚めたのは手術後のレストエリアでした。
尿意を感じて目覚めたときには特に強い痛みも吐き気などもありませんでした。ナースがお水を持ってきてくれて、その後テレビを見て休んでね、と言われてテレビのリモコンを渡してくれました。その後またナースがジュースを持ってきてくれました。点滴はついたままでしたのでトイレも点滴を持って行きました。
2時間ほど休んで帰宅してもいいと言われました。車イスで車があるところまで運んでくれました。

(この日のコスト:全身麻酔、LEEP手術すべて→保険のCopay $50)

⑧8月31日 手術後検診

術後検診で手術報告書のコピーをもらい、内診をしました。取り除いた細胞はガンではなかったということでやっと最終的に安心することができました。ただし、かなりガン細胞に近づいていたそうで、再び細胞が悪化する可能性は十分あるので、3~4か月中にPAPテストを受けるよう言われました。

(この日のコスト:$0)

すべての工程にかかった費用の合計 $312.86

☆今回の経験についての感想☆

いつもとは違う腹痛があり何となく違和感があったので病院へ行きました。その結果、子宮頸癌になる一歩手前で、すぐに前癌細胞を取り除く手術をしなければならないということでした。この結果には本当にびっくりすると同時にとても不安になりました。

幸運にも私は1年目が終了して2年目が始まるまでの間の約2週間、カリフォルニアのAIJ代表のボウマンさんのお家に滞在させて頂いていましたので、上記体験記の④以降はカリフォルニアの病院でボウマンさんのお宅に滞在しながらの経験でした。検査結果により手術が必要な事態となり、ボウマンさんと相談して2年目のホストファミリー宅への移動を2週間遅らせ、カリフォルニアで手術を受けて元気になってから移動することを決めました。ホストファミリーに状況を連絡すると、快く理解してくれて暖かい言葉をかけてくれてとても安心しました。またボウマンさんがエージェンシー本部とやりとりをしてくれて、エージェンシーもすぐに対応してくれて、飛行機の予約変更も行ってくれました。
ファミリーとエージェンシーの了承を得て、安心して手術に集中することができましたし、ボウマンさんが問診票やドクターとの会話で分からないところを通訳して下さったりして、とても助かりました。もし自分一人でやらなければならなかったらとても大変だったと思います。

私は今まで手術をしたことがありませんでしたし、今回のアメリカで日帰り手術が初めての手術経験でした。血圧を測るところから始まり、今までの病気について、薬のアレルギーなどたくさん質問をされます。違う人から何度も同じ質問されますので、最初は混乱しますがだんだん慣れてきます。いざというときのために持病や今までにかかった病気の英単語は絶対に知っておかないと、と思いました。
手術室へ移動してから、麻酔士にマスクをあてられ何回か呼吸をし、目を開けたら違う部屋でもう手術は終わっていた ― これがとっても不思議で感動しました。

今回の病気については、すべてがベストタイミングだったと幸運に思っています。
カリフォルニアで手術を担当してくれた女医さんもとても優しく素敵な先生で、安心してすべてを任せられました。
また病気、ガンの危機であった現実を体験したことから、やっぱり健康であることがとても有り難いと改めて思いました。
最後にAIJのボウマンさん、サポートの大野さんには本当にお世話になりました。本当にありがとうございました!

☆オペアの皆さんへメッセージ☆

普段生理が重い人や婦人科系が強くない人はオペアとして渡米する前に、子宮頸癌検査や乳癌検査をしてくる事をお勧めします。私は元々生理が重い方なのですが、3年前くらいに検査をしてそのとき異常無しだったため、安心して渡米前には検査をしませんでした。ドクターの話では数年かけて細胞が悪くなっていたはずだ、ということでしたので、年に一度くらい検査していればもっと早く病気を発見できたはずです。定期健診の大事さを痛感しました。アメリカでの診察や治療は不安でいっぱいになりますが、やはり健康あってのオペア生活、皆さんも気を付けてください。

AIJボウマンより

今回のユリさんの体験は私にとってもとても貴重な経験となりました。
普段オペアの皆さんとは同じアメリカとは言え、遠距離で暮らしていますので、オペアが病院にいくときの不安や英語でのやりとりによる大変さ、というのを目の当たりにすることはありません。ユリさんに付き添ってドクターと話をしたり、フォームに記入したりの作業をすることによって私もこの実体験をすることができました。

まず皆さんに知っておいていただきたいことは、オペアには健康保険があるということです。50ドルのCopay(自己負担額)がかかりますが、医療費の高いアメリカで、この額はごく少額のコストと言えます。今回のユリさんの治療にしてもLEEP手術だけでも総費用は6~7千ドルということでした。保険がなければ到底オペアに支払える額ではありません。保険があるのでユリさんの支払った額は300ドル少しですみました。またシンプルな手術で元気になれる病気だったのでユリさんはラッキーでしたが、発見が遅ければもっと深刻な病気になっていたはずです。

長期に渡る治療が必要な病気になった場合、オペアはプログラムを断念し、帰国することになります。そう考えると、普段から体調には注意を払って、異常があれば保険を使ってドクターに診察してもらうことがとても大事だと言えます。これは一般的な常識とも言えますが、アメリカで滞在しているオペアにとっては英語での診察となり、つい気が引けたり、どうすればいいか分からなくてもたついてしまうことも多いでしょう。病院のシステムを大体把握しておくことによって当日慌てないように準備することができます。

  1. 病院にいくとまずは問診フォームに記入をさせられます。一般的なサンプルはこちらです。病院にかかる前にはこのサンプルに記入してみて、分からない単語などは調べて勉強しておきましょう。記入したものをプリントして持参すると役に立つことがあるかもしれません。
  2. 持病、アレルギーがある人は事前に英語で説明できるようにしておきましょう。
  3. 常用している薬、そのとき使った薬があれば説明できるようにしておきましょう。
  4. ホストファミリーに状況を説明し、できるだけ助けてもらってください。手術が必要になれば病院への送り迎えなどが何往復も必要です。ひとりでできることではありません。エージェンシーの担当カウンセラー/ディレクター、知り合いなどにもヘルプを求めて手伝ってもらってください。
  5. 婦人科系の病気については、現在は検診によってほとんどの病気を早期に発見することができます。元々婦人科系が弱い人などはアメリカ滞在中にもPAPやマモグラムなどを年に一度受けておくことをお勧めします。

何事も体が資本、特にオペアの皆さんは海外滞在中でストレスも多い生活を営んでいます。普段から健康には注意して、いざというときには我慢をしないで病院へ行ってくださいね。
困ったことがあればいつでもAIJまでご連絡ください!